昔から「新茶を飲むと1年間無病息災で過ごせる」と言われていることから、新茶を見つけると必ず購入するという方も少なくないでしょう。
しかし、気づけば新茶っていつでも小売店で見かけますか?
ひょっとして新茶の時期は年に何度かあるのかしら?なんて思ったことはありませんか?
ここでは「新茶」にフォーカスし、新茶の時期や美味しい淹れ方に至るまで、新茶にまつわる様々な情報をまとめていきます。
知っている方はもちろん、お茶についてもっと広く知りたいと思っている方は、是非ご一読下さい。
新茶の時期と種類について知ろう
お茶屋さんの軒先に「新茶」のノボリが立つと、ああ、今年もそんな時期になったか・・・と思うものの、実は年中立ってるのでは??なんて疑問を覚えた方もいるのではないでしょうか。
そこでまずここでは「新茶の時期」や「新茶の種類」について詳しく紹介していきます。
新茶の時期は年1回って本当?
冒頭で書いた様に、新茶は年中店先に出ているのではないか?と思われがちですが、実は『新茶の時期は年一回』です。
初摘みが行われるのは、毎年4月下旬から5月初旬あたりで、そこで摘まれたお茶が「一番茶」と呼ばれる言わば新茶になります。
無論、その後も茶摘みは行われており、6月〜7月に摘まれるのが二番茶、7月半ばから8月にかけて摘まれるのが三番茶、そして最後に9月〜10月中に摘まれるのが四番茶とそれぞれ呼ばれます。
大体45日間隔で茶摘みが行われ、四番茶を摘み終えると茶畑は休眠の準備に入るそうです。
ちなみに、小売店などで「新茶」というラベルが付いているものは全て「一番茶」となり、無いものはどれも二番茶以降のものと言って間違いありません。
お茶の味は茶摘みの時期で変わる?
そこで気になるのは「なぜ新茶に特別感があるのか?」だと思います。
確かに摘み取る順番はあるにせよ、摘みたてなら時期に関わらずどれも新鮮で美味しいのでは?と考えて不思議ではないでしょう。
実を言うと、茶葉は摘菜する時期によって風味が大きく異なると言われており、新茶として摘み取るのは生まれたての柔らかい希少な「芽」で、淹れると甘みが強く繊細な味わいを愉しめるのだそう。
そして二番茶以降になると、春の暖かい日差しをたっぷりと浴びていることから、摘み取る順番ごとに渋みが強くなっていくと言われています。
つまり、摘み取る時期が遅くなるほどお茶の風味は落ち、結果として新茶は風味が良く美味しいと重宝されているという訳です。
新茶の「出物」って何??
新茶の摘み取りが後半になると、「出物」と呼ばれるお茶が出てきます。
出物とは何か?に付いて説明する前に、まずお茶の加工に付いてお話をしておきましょう。
新茶として摘み取った「芽」は「蒸し」「揉み」「乾燥」という工程を経て製茶され、そこで緑茶の原型が仕上がります。
そしてその加工の段階で「茶葉の大きさ」が異なるものはふるいにかけられ、そこで落とされた茶葉を集めたものが「出物」と呼ばれます。ただし、出物は取れる量が非常に少なく、部位ごとに「芽茶」「茎茶」「粉茶」と分けられるそれらは、どれも希少なお茶として、特に通な方から好まれているそうです。
個々の出物について簡単に特徴を紹介すると・・・
●「芽茶」・・・強い香りを持ち、旨みが凝縮されている
●「茎茶」・・・渋みが少なく、すっきりとした味わい
●「粉茶」・・・お茶の奥深い風味と、新鮮で豊かな香りを持つ
淹れ方によって若干変わる様ですが、個々に全く異なる特徴を持っています。前記しましたが、非常に希少なものになるので、もし出物を見かけた際は、ぜひ購入してみることをおすすめします。
お茶の種類と相場について知ろう
摘み取る時期によってはもちろん、お茶は種類によって味のみならず価格も大きく異なります。
また、国内で生産・販売されているお茶の種類も多く、価格もまちまちです。
そこで同章では、緑茶をメインとする日本茶の種類や特徴、さらに個々の相場についてまとめていきます。
そもそもお茶の種類はどれだけある?
国内で生産されているお茶のほとんどが「緑茶」であり、その約50%が煎茶であると言われています。
では、煎茶とはどんなお茶なのか? それだけでなく、粉茶や玄米茶、ほうじ茶や玉露など、代表的な緑茶の種類や特徴について下記にまとめてみました。
●玄米茶
玄米茶は言わば茶葉と米をブレンドしたもの。水分を含んだ米を蒸してから炒り、それに番茶や煎茶などを混ぜたものが玄米茶と呼ばれます。
炒ったお米と茶葉の香ばしさはもちろん、お米が入っていることでカフェインが少ない点も玄米茶の大きな特徴と言えるでしょう。
●ほうじ茶
その名の通り、茶葉を焙じて出来たものがほうじ茶となります。
使用する茶葉は煎茶や番茶、さらには茎茶などで、それらを薄茶色になるまで焙じれば完成です。
お茶屋さんの店先にあるような「焙じ機」がなくても、奉書紙と茶葉さえあれば、ご家庭でも作ることができます。
●煎茶
緑茶の代表的な銘柄がこの煎茶です。
簡単に製造工程を説明すると、日光をたっぷり浴びた茶葉を、蒸した後に乾燥させたものが煎茶と呼ばれます。
爽やかな香りと渋み、そしてほんのりと甘さが残る味わいが煎茶の美味しさの特徴です。
●深蒸し煎茶
基本的には煎茶を同じ方法で製造しますが、煎茶よりも蒸す時間を倍にしている点のみ異なります。見た目は煎茶よりも粉っぽい印象を受けますが、味に関しては煎茶よりも渋みが少なくすっきりとした味わいを愉しむことができます。
●玉露
日本茶の中でも最高級と言われる玉露は、その味わいも格別です。
一口啜ると、強い甘味を覚えた後、上品な旨味が残ります。
日光を遮断し、暗所でじっくりと茶葉を熟成させるため、栽培工程も他のお茶より手間と時間がかかっています。
栽培方法や味を知れば、玉露が高級品と言われる理由がよくわかるでしょう。
●粉茶
玉露や煎茶の仕上げ工程でふるいにかけられた茶葉の中から、細かい粉だけを抽出したものが粉茶となります。
尚、勘違いする方もいると思いますが、小売店などで販売されているインスタントの粉茶とは全くの別物です。
●茎茶
茶葉を抽出するまでの工程は粉茶同様。
ふるいにかけた茶葉の中から新芽の茎だけを抽出し、まとめたものが茎茶となります。
爽やかな香りとほのかな甘みが特徴です。ちなみに、茎茶は別名「棒茶(ぼうちゃ)」とも呼ばれています。
お茶の値段はどこで決まる?
スーパーなどの小売店で、お茶の価格を比べた経験がある方ならお分かりいただけると思いますが、お茶は同じ品種でも価格が大きく異なるケースがあります。
茶葉の種類と量は同じなのに、価格に数百円もの差が生じるのはなぜか? そもそも、お茶の値段はどうやって決めているのか? それは・・・
お茶の価値 = 1. 原料茶葉の質 + 2. 個性 ー 3. 欠点
という公式に則って算出されていると言われています。
「茶葉の質」はわかると思いますが、個性とは一体何か?それは、加工方法によって同種の茶葉でありながら「異なる種類の香り」や「強い香り」を生み出すことができたものに与えられるプラス点のことです。
つまり、優秀な「香り」を持つ茶葉に与えられる価値と言って良いでしょう。
そしてマイナスされる「欠点」というのは、保存状態になります。
茶葉は、鮮度の良し悪しによって風味や味わいが大きく変わります。
保存状態がよく鮮度が良いものを基準とし、それを下回るものに関しては減点される、つまり価格が落ちることになるのです。
同じ種類のお茶でも価格が異なるものを見かけたら、前記した公式を思い出して飲み比べてみるのも面白いかも知れません。
日本茶と外国茶の差異は?
日本で栽培されているお茶の多くは緑茶であると紹介しましたが、小売店などでは日本茶以外にも紅茶や中国茶なども販売されています。
個々に日本茶との違いを簡単に説明するなら、紅茶は茶葉の栽培地が異なります。加工方法もまた独特です。
そして、紅茶の産地として最も有名なのはインドとスリランカで、中でも前者は世界最大の茶葉産出国と言われており、茶葉の種類も非常に豊富です。
そして中国茶と日本茶の大きな違いは、その加工方法にあります。日本茶は加工時に「蒸す」工程を重要視し、中国茶は「炒青」という言わば茶葉を炒める工程を主とします。
なぜ異なるのか? というと、それは違いに求める点が異なるからに他なりません。
日本茶が味を重視することに対し、中国茶は香りを大事にします。確かに、中国茶はどれも鮮烈で独特な香りを持っていますが、日本茶は加工時にひと手間加えたほうじ茶や玄米茶以外、さほど強く独特な香りは覚えません。
中国茶の中でも人気のジャスミン茶は、茶葉にジャスミンの花を刷り込むほど混ぜて加工します。
これぞ香りを重視する中国茶の模範的な一品と言えるでしょう。
新茶を美味しく淹れる方法は?
前章では、茶葉によって味や香りが大きく異なる点について解説しましたが、実は「淹れ方」によってもお茶の味は大きく変わります。
『お茶の淹れ方なんてお湯を入れてしばらく放置してから注げばよいだけでは?』と思っている方が多いのではないか?と思いますが、お茶は淹れ方でいかようにも美味しく飲むことができるのです。
ここでは、一般的なお茶の淹れ方から、絶対にやってはいけない淹れ方に至るまで、総合的に紹介していきます。
そもそもお茶は淹れ方で味が変わる?
茶葉の鮮度や種類だけでなく、お茶の味を変えてしまう要因はその淹れ方にあります。そして大事なのは・・・
●茶葉の量
●湯の量
●湯の温度
●抽出時間
●急須
以上の5点です。
使う急須についてはそこまで気にしなくても良いと思いますが、玉露や煎茶など、低温の湯でじっくりと時間をかけて味を引き出すべき種類のお茶は小さめの急須が合うなど、お茶の種類によって合う急須と合わない急須があるのは事実です。
では、お茶を美味しく淹れる具体的な方法を流れに沿って解説していきます。
①湯のみにお湯を入れしばらく置いて冷ます
②急須に茶葉を入れる
③湯のみで冷ましたお湯を急須に入れ、60秒程度放置する
④最後に急須のお茶を人数分の湯のみに注ぎ分ける
以上になります。
尚、お湯の量は湯のみの7〜8分目程度を目安にし、温度は80度前後に合わせましょう。
ごく簡単な方法ですが、これに倣って淹れると、いつもより美味しいお茶を味わうことができると思いますので、ぜひ一度試してみて下さい。
新茶を美味しく淹れる方法
前項では、お茶を美味しく淹れる方法について紹介しましたが、実を言うと茶葉によって若干淹れ方が異なります。
では、新茶の場合はどうなのか?というと、急須にお湯を入れてから湯のみに注ぐまでの時間が異なり、前項では「60秒程度」と紹介しましたが、新茶の場合は『30秒程度』置いてから注ぐのがベスト。
ちなみに、お湯の温度は双方共に「80度前後」と書きましたが、万が一それ以上・それ以下の温度だとどうなるのか?と言うと、温度が高いほど香りは強くなり、一方で苦味が増します。
逆に温度が低いと香りは立たず、苦味も少ない仕上がりになることを覚えておきましょう。
好みで温度を変えても良いかもしれませんね。
新茶を淹れる際にやってはいけないこと
新茶というより、お茶を淹れる際のNG行為について紹介します。
新茶はもちろんのこと、お茶を美味しく飲むために、以下の点はぜひ覚えておいて下さい。
●茶葉の袋を簡易的に閉める
よく茶袋を輪ゴムなどで簡易的に閉じている様子を見ますが、袋の口はしっかり閉じていないと酸化が進んでしまうため、絶対にしっかり閉じましょう。
剥がせるテープや、袋の口を完全に覆って閉めることができるクリップなどを使うのがおすすめです。
●お湯を熱いまま急須に注ぐ
ポットから熱湯を急須に直接注ぐ様を見たことがあると思いますが、お茶を美味しく飲む方法としては適していません。
無論、沸騰したヤカンのお湯をそのまま急須に注ぐのもNGです。
前記したように、お茶はお湯の温度で味と香りが大きく変わるため、個々の茶葉に適した温度のお湯を注ぐべきです。
しかしながら、沸かす温度を設定できる機能が実装されているポットであれば問題ありません。
●お茶を湯のみに注ぐ際、急須を揺り動かす
こちらもよく見る光景だと思いますが、急須にお湯を入れた後、揺り動かしながら湯のみに注ぐのも実はNGです。
理由は簡単で、急須を揺り動かすことで、お茶の旨み成分だけでなく、苦味成分も必要以上に抽出してしまうため、苦くなってしまうからです。
急須から湯のみに注ぐ際は、できるだけ動かさず、ゆっくりと注ぎ入れていくのがコツになります。